普通の美容室がなぜヘナをしてくれないのか?(2025/05/21更新版)

お客様からよくいただく質問のひとつです。
天然ヘナサロンのあるあるですね。
何年も、何回も、何人もにこの話をしています。
新規の方のご相談のうち30%程度を締める永遠のご質問。
ヘナはメニューにあるのにしてくれない、そもそもヘナをしていない、新たに取り入れてくれない、他のカラー及びマニキュアへ誘導されてしまう、怪訝そうな顔をされてしまった、なぜヘナがしたいのか質問攻め…最終的には宗教っぽいなんて言われてしまう始末…。
あなたは心からやってみたいと思うヘナ、でもやってくれないサロン…できればプロにアドバイスをと思い聞いてみたところ否定される…。
どこのサロンでも天然のヘナへの理解が進み、取り入れられると良いですが…さて、どうしてやってくれないのか。いくつか考えられることがあるので順を追ってお話ししていきたいと思います。
早速1つ目の理由から。
普通のヘアサロンにはいろいろなタイプのカラーリング製品が準備されており、ヘナよりもその他カラーリング製品の方が綺麗に希望の色に染めることができます。カラーチャートを指さし、「今回はこの色で」と簡単に色の表現が可能です。これがヘナをおすすめしない1つ目の理由です。
通常のサロンで重要視されることは綺麗な色の表現やミスなく白髪をしっかりと染めることです。
髪を染めるといってもヘアカラーリング製品には種類が色々とあります。アルカリカラー、マニキュア、ノンジアミン、植物系のハーブカラー、人工染料のヘナ…挙げればもっとたくさんありますが大体がこのラインナップかと思います。
上記のカラーリング製品は、どれを使っても概ねしっかりと染まります。色持ちは製品の種類により様々ですが、染めた当日に白髪は元からなかったことのようにきっちりと染まります。最近はいわゆる白髪染めではなくハイトーンカラーで白髪をぼかして染めたり、ブリーチ剤を使いハイライトやローライトを取り入れて染めることも多くなってきました。トーンアップのカラーリングやハイトーンのカラーリングに関してもWカラー、トリプルカラーなどを駆使すれば望んだ通りの希望の色を表現することができます。
従来のカラーリング製品ではファッション性、かわいさ、上品さなどを色を使って多彩に表現することが可能です。カラーの種類によってはダメージが出ます。
では、天然のヘナはどうでしょうか?
色のバリエーションは豊富ではなく、ヘナ単体で見るとオレンジ色です。また当日の色は薄く、インディゴを使えば白髪の部分は緑っぽく仕上がります。酸化を待たなくてはならないため発色まで1日〜3日程度かかります。放置時間もカラーリングに比べれば長いです。単純にその日に色がわかりません。
白髪の染まり方もカラーリングと同様にはなりません。暗めの茶にはできても、真っ黒く染めることは不可能です。染めた後も白髪の部分はややキラキラと光りますし、黒髪は黒髪のまま、黒髪を茶色にはできません。白髪の場所によって色がつくのデザインができません。
このように普通のサロンでは沢山のカラーリング剤と天然ヘナを比較するとカラーリングのほうが綺麗にどんな雰囲気にも染められます。再現できない色味は無くデザインも無限大。お客様の主な目的は綺麗に白髪を染めたり、希望の色にすることです。色の表現が難しく、時間もかかるヘナをお勧めする必要はあまりないのです。
次に2つ目の理由は…
この先も明るくしたい場合、カラーチェンジが難しくなるからお勧めしたくない…
暗めの天然ヘナ(インディゴの含有量が多い場合)を何度もくりかえした髪はその後、明るめの髪色に戻すのが難しくなります。
ヘナを何度も繰り返した後、髪色を変えたくなることもあるかもしれませんが、暗めのヘナで何度も染めるとブリーチを使ってもなかなか明るくするのが難しいです。
ヘナを何度もした髪から明るめの色を出すためにはいくつものプロセスが生じます。3回程度のカラーリングでやっと目的の色に変更できれば良い方です。時間も3時間程度はかかってしまいます。
パーマについてもヘナをしている髪は健康になっているので思い通りにかかりづらく、強めにかけることが多いです。これは良いことでもありますね。
(ヘナを続けるとかかりずらく、とれやすい健康毛状態になります)
お客様がずっとヘナをやり続ける強い気持ちの場合やカラーリングによる大幅な色の変更を求めていない場合はヘナをお勧めしやすいのですが、大幅な変更を求められてしまうと対応が難しいこともあり、デメリット部分が前面に出てきてしまいます。
(ヘナのみ、オレンジ色だけで染めている場合はカラーチェンジはさほど難しくありませんが、インディゴで暗くなっている場合は難しく、時間がかかります。できないわけではありませんが、スキルと時間が必要です。)
このような場合も想定して普通のサロンではヘナをおすすめしにくい状況があると思います。
3つ目の理由は…
人工染料のヘナと天然ヘナの勘違い。
真っ黒になるからおかしいですよと美容師から言われる場合は人工のヘナをするのだと思っている場合がほとんど。
そもそも天然のヘナはオレンジなので黒くすることは不可能です。オレンジが嫌な場合インディゴを入れることで茶色、焦げ茶色など色を濃くしたり茶色にしたりすることができますが、人工染料のように漆黒の黒には染まりません。
この2つは全くの別物なのでこの場合は強く止められることは理解できます。なにしろ人工染料のヘナの場合はカラーチェンジが本当に難しいです。
そしてドス黒いという表現が当てはまってしまうほど不自然な黒に染まります。
こればっかりは私もお勧めしません。
人工染料のヘナについては別のコラムで詳しく説明していますので割愛します。
4つ目の理由は…
今まで天然のヘナを扱うことがなく、天然ヘナのことをよく知らない場合。
例えば美容師として30年仕事をしていてもヘナに触れる機会がなければ得体の知れない謎の物です。
これから取り入れるとしてもこれから新たにヘナの勉強をする必要があり、新規導入のために新たな費用と勉強にかかる時間が必要となります。
現状のカラーリング類で多くのお客様が満足していれば新たにヘナを導入する必要もないためヘナのことはよく知らないとなります。
ヘナを希望する1人や2人の顧客のために新たにヘナの導入をしてくれるかと言われれば難しいことも考えられます。
私は転職しまくっていたため、働いてきたお店が約11店舗程度あります。11店舗のうち人工染料のヘナは8店舗に置いてありました。反対に天然ヘナは2店舗のみでした。この2店舗は普通のサロンです。最後に天然ヘナの専門店で長く勤めました。
お店で天然ヘナを扱いたいと思う特別な理由がなければ、新たに導入することは珍しいのではないかと思います。私が過去に働いていたお店ではこんな理由で新たにヘナを導入するに至っていました。
1・女性オーナーが髪にとても良いと聞いて自身が体験し、すごくよかったので導入に至った。
その後、ヘナのメーカーから講師を招き、しっかりと講習を受け人工染料のヘナ数種類と天然ヘナのナチュラルのみを(オレンジ色)導入しました。この頃はインディゴを使って染めるのはまだまだ一般的ではなくメーカーさんからもほとんど勧められた記憶はありません。
まずはこのお店で人工と天然の違いについて勉強しました。お客様に使用するのはほとんど人工染料のヘナでした。こちらからのご提案では天然ヘナをおすすめしますが、オレンジ色しかなかったためお断りされることが多かったです。
今思えば、人工染料のヘナですら選んでいただくお客様は少なく、まだまだ時代が追いついていなかったと感じます。
2・カラーリングでひどくかぶれてしまいドクターストップとなってしまったお客様がおり、どうしても染めたいとのことでヘナを使って染めることにした。
こちらのお店では元々、天然のヘナを扱っていました。使用する機会はほとんどなかったため、メーカーに何度も問い合わせるなどして新たに天然ヘナを勉強し直しました。
この時はヘナのみからインディゴまでさまざまなヘナとハーブを使用しました。色々なカラー展開があり、「おぉ〜!こんなに白髪が染まるなら天然でいいじゃん。人工のヘナは不自然に染まりすぎだったんだね」とスタッフ同士で話しました。
また、人工染料のヘナには化学物質が含まれており、こちらのお客様には使えませんでした。人工染料のヘナを天然と勘違いしている美容師さんは残念ながらまだいらっしゃるようですので、アレルギーをお持ちの方は特にご注意くださいね。かぶれてしまうお客様は人工染料のヘナを使用することができません。しないよう、されないようにご注意ください。
その後、天然のヘナをメインに扱う専門店(カラー・パーマ・ハイライト・縮毛矯正なども扱っていましたが、皆さん主にヘナをしに来店します)後に1番長く勤務することになりましたが、ここで働くまで、こんなにも多くのお客様がヘナを求めているとは思ってもみませんでした。個人的にヘナが髪に良いことはずっと昔に知っていましたし、色もそれなりに選ぶことができるのに、このサロンで働くまでほとんどの方に天然ヘナを勧めることはなく、美容師として働きはじめてからすでに12年程を過ごしてきていました。
例に挙げた2店舗、どちらのパターンもヘナを導入する理由がありました。天然のヘナがいいと聞いてきたオーナー本人がやってみてよかったと思ったこと。
かぶれてしまう顧客のためにかぶれない素材はないかと、ヘナを改めて勉強し、ヘナで染めてみたこと。
何かきっかけがないとお店側は天然のヘナを新たに導入するのは難しいのではないかと思います。
何かのきっかけからヘナを扱ってみたいと思い、お客様にやって差し上げたいと思わなければ天然ヘナはいつまでも日陰の存在といった感じです。
今までに述べてきた理由も含めてお店に導入されずらいのが現実です。
5つ目の理由は…髪を健康的に傷ませずに染めたいという切実な思いは伝わりづらい…ということ。
皆さんがヘナをしたい主な理由は…
・白髪を傷ませずに染めたい
・アレルギーがあり染められない
・安全な物で染めたい
あげればもっとたくさんの理由はありますが、主な理由は3つに絞られます。時にはその他の理由が絡み合っている場合もあります。
一般的なカラーリング製品と、この3つは切っても切り離せません。化学物質は取り除けませんし、アレルギーが出ることもありますし、カラーリングは薬品を使用します。そして髪は傷んでしまいます。
ダメージが気になるからヘナをしてみたい…
この場合、傷みにくいカラーリングと、トリートメントをご提案するでしょう。傷みにくいカラーリングとトリートメントを併用することで色もダメージも気にならない程になりますし、質感もツルッと仕上がります。
アレルギーについて…
アレルギーのあるお客様への対応は、刺激を感じても「あともう少しでシャンプーしますので我慢できますか?」「根本を外して、浮かして塗るから大丈夫だと思います」と言われてしまったり…
アレルギーは治ることがありません。原因物質を除去するか、近づかないようにするしかありません。
かゆくなってしまうのを我慢して染めているのも良くないのではないかと思います。アレルギーに対する考えは様々ですが、もっと慎重になるべきだと私は考えます。
安全な物で染めたい…
安全かもしれないけど、安全なだけでそれ以外は叶わない…と言われがちです。
残念ながら、安全で自然なもので染めてみたい!天然のヘナをしたい!と思っているお客様の思いは、そんなにも強い思いだとは思ってもらえずやってみたい気持ちは置いてきぼりになりがちです。
誰でも体験したことのないことは不安です。
また、体験したこと、勉強したことしか語れません。
単純にやったことがなければそのことについてよく知らないだけなのです。
やらない理由というよりも、やらなくても良い理由が沢山あるという表現の方がしっくりくるような気がします。
ヘナのデメリット部分は気になりましたか?
ダメージは避けられないけれど、とにかくしっかりと染まるカラーリングの方が良いですか?
まだヘナをしたことがないお客様は、ぜひ天然ヘナを試してみてください。アレルギーで染められないと諦めているお客様もパッチテストの後、ぜひ試してみてください。白髪染めに比べれば染まりは薄いですが、白髪を隠して染めるよりも、染まりすぎない方が伸びてきた白髪は目立ちにくいです。また長い目で見て髪が綺麗になっていく喜びはなによりも嬉しいものです。
注・もしヘナがメニューにあったとしても…
繰り返しになりますが、ヘアサロンにおけるヘナとは主に人工染料の入ったヘナだということ。人工染料を使ったヘナとは、ヘナをベースに人工的な染料を加えてあるヘナです。外看板にさらっと【ヘナ】と書いてあっても高確率でこのタイプのヘナである可能性が高いです。
カラーリングで痒くなってしまうお客様は事前に必ず確認しましょう。人工染料のヘナはカラーリングと同じようにかぶれてしまうことが多いです。
アレルギーは治りません。アレルギー物質を避けて染めるようにしましょう。
対照的に天然のヘナを扱っている所はまだまだ少ないです。その中でもオレンジ色になるナチュラルヘナだけを置いているお店とインディゴなどが含まれたヘナも置いているお店に分かれます。(インディゴを使わなければ色の調節ができませんので希望の色に近づけることはできません)
アレルギーがない方は人工染料のヘナでも問題ありませんが、アレルギーがある方はよく確認してください。